第10章 画面向こうの女はむせ返るほど甘い愛を囁いた
スティーブンは寒空の道沿いを歩き
川を眺めながら
エレンの笑顔や
名前と良く行った
トラットリアのザムドの顔を思い出した。
はあ
大きな溜息が出る
「そっか‥‥俺 はしゃぎすぎてたんだ」
小さいつぶやきと共に
口から出る白い息を眺めた。
キキッという車の止まる音と共に
「・・・・旦那さま?!」
後ろを振り向くとヴェデットの姿がある
「どうしたんですか、こんな所で
パーティはもう?」
「ああ」
「片付けはいいですから、今日は休んでください
明日9時にお伺いしますね」
「かあちゃーん」と車からヴェデットに良く似た
子供が声を上げる
「息子のガミエルと娘のエミリーダです」
ちゃんと挨拶しなさいとヴェデットがゆうと
「こんにちはあ」と小さな頭を下げる
そんな姿に「いい子達だ」と声をかければ
少し嬉しそうに
「もう本当騒がしいばかりでーー」
とヴェデットが答える
2人の子供を眺めて、小さく笑みがこぼれる
「ヴェデット・・・
なんか、ありがとう」
いや、何でもない。そう小さく呟き
走り去る彼女達の車を見送ると
少し早足で家路についた。