第10章 画面向こうの女はむせ返るほど甘い愛を囁いた
カウンターキッチンのイスに腰掛け
ヴェデットと並びながら手際よく料理をする
スティーブの姿を眺めている
「名前そんなにじっと見つめられると
緊張しちゃうじゃないか」
言葉と裏腹に余裕のある大人な笑みを浮かべる
スティーブン
たわいもない会話を楽しんでいると
ピンポーン
来訪者を知らせる音がなり
「これ、30秒たったらあげといて」
そういうと、早足に玄関へ向かう。
座ったまま、また料理のするヴェデットを眺めながら
1つローストビーフを口に放り入れると
スティーブンが言っていたように本当に美味しく
自然と顔が綻ぶ
「ハーイ!スティーブン」
大きな声と共にガヤガヤと人の気配がする
いつもの静かな家に大きな笑い声がひびく
名前はヴェデットにご馳走さまと
声をかけ
『ただの部下は部屋で大人しくしていることにするわ』
肩をすくめそう言ってみると
クスクスと笑いながら
「それではまた」と声をかけてくれる
すこしかがんで
『お疲れ様』とハグをし
賑やかな声を背にして部屋に戻っていく
暫くしてワインを取りにキッチンにもどってくる
スティーブンに名前が、部屋へ戻っている事を伝えると
「ヴェデットもあとは僕がやるから
今日はもういいよ」
料理の支度をしていたヴェデットにそう声をかけた
「え?でも、旦那様」
戸惑うヴェデットの声を遮る様に
「お疲れ」と声をかける
間をおきもう一度
「お疲れ」とスティーブンが発すると
ヴェデットはそっと、玄関を出て行った。