第10章 画面向こうの女はむせ返るほど甘い愛を囁いた
シアタールームに顔を出すと名前の姿はなく
ふんわりと甘い香りのするリビングに足を向ける
リビングの戸を開けるとキッチンにたつ
名前の姿を見つける
スティーブンが近くにいるのも気づかない程無防備に
何やら一生懸命する名前の後姿に、
腕を回したい衝動を抑え
名前の名前を呼びながら隣に立つ。
ハッとこっちに顔を向け、
驚いたように数回瞬き瞬きすると
クスリと笑い
スティーブンの濡れた毛先をそっと触る
『風邪ひいちゃいますよ?』
『こんな無防備なスティーブンさんを見られるなんて
なんだか、くすぐったい感じですね』
もしかして、急いでくれたんですか?
悪戯っぽく呟く彼女の甘い言葉に
シャワーで流した昂ぶった思いが
また蘇ってくる
自分を誤魔化すように、彼女の瞳から目を逸らし
「何をしてたんだい?」と、尋ねると
『先程余っていたワインで、ホットワインを』
そう言いながら、少し大きめのマグカップを2つもち
映画見ながら飲みましょうよ。と、嬉しそうに少し早歩きで
シアタールームに向かっていく。