第10章 画面向こうの女はむせ返るほど甘い愛を囁いた
『お邪魔しまーす』
何度目かになるスティーブンの
自宅の扉をくぐると
帰り支度をしていた
スティーブンの家の家政婦がひょっとこりと
奥の部屋から顔を出す
「お待ちしておりました名前様」
『久しぶりねヴェデット!!』
彼女に挨拶のハグをすると
『少しの間お世話になります』
名前は丁寧に頭をさげる
その姿にアタフタするヴェデットに
ふんわりと笑いかける。
しばらくお世話になる部屋に案内されれば
あらかじめスティーブンが連絡してくれていたのか
もうそこには名前の僅かばかりの
着替えが、シワひとつなく綺麗に
クローゼットに並び
頼んでとってきてもらった
枕とお気に入りのタオルケットが
まるで元からこの部屋にあったかの様に
ホテルの様に整ったベットに馴染んでいる。
リビングからは、微かに夕飯のいい香りがする
『オニオングラタンね!』
キラキラとした笑顔をヴェデットに向ければ
「旦那様が名前様の好物とおっしゃっていたので
お気に召すか分かりませんが」
「ヴェデットのオニオングラタンは最高なんだよ」
優しく微笑む上司に
『ありがとうございます』
もう一度お礼をする。
「それでは私はこれで」
「お疲れ」
名前は玄関に向かうヴェデットに
もう一度お礼をいうと、スティーブンに背中を押され
リビングへと向かう。
机の上には、美味しそうなご飯ばかりが並び
名前の顔がほころぶ
「君のそんな顔を見られて嬉しいよ」
艶のある笑顔を見せると
綺麗なワイングラスを2つ並べ
コトリとワインボトルを机に置く
少しウキウキして見えるスティーブンさんの
向かいの席に腰を下ろした。