第8章 豪運のエイブラムス
スクーターの後ろに名前を乗せ
病院へ向かう。
石鹸の匂いと、いつもの甘い香りが後ろから
ふわふわと香ってくる
きゅっと名前の腕に力が入り
背中にあたる2つの柔らかな感触に
僕もハンドルを持つ手に力が入りスピードが上がる
『ねえ、レオ。』
「どうしたんですか?」
『目を開けた時ね、レオが居てくれて本当に良かったわ』
1人だったら寂しくて泣いちゃってたかも。とおどけた声で
話す名前がどんな顔をしているかはわからなかったが
ありがとう、と呟いた声は憂いを帯びていた。
病院に着くと病室の前に、大柄の男がベンチに座っている
姿がすぐに目に入る
「クラウスさん」
声をかけると、名前のもとに駆け寄り
彼女の頬をそっとその大きな手で包み込むと
「名前!もう良くなったのか?!
すぐに動いてもらって本当にすまない」
『何言ってるんですか。これが私の仕事ですよ
気を失わなければすぐに治療が出来たのに‥‥』
ぐっと下唇を噛み
彼の大きな手に手を添わせながら
『心配させてしまってすいません。』
それじゃあ、2人のもとに行ってきます。
と病室に入る名前の背中をクラウスさんと見つめる
「レオナルド君も疲れただろう?」
「いえ、僕は大丈夫です
もう、目も治してもらいましたし」
名前が出てくるまで病室の前のソファに2人で腰掛ける
「おーレオ!おめえが来たってことは
名前はもう良くなったのか?」
「はい、今2人のもとに行っています」
「明日にでも退院できるだろう」
「おい陰毛アタマ 目治って良かったな」
探る様な視線で、じっとこっちを見てくるザップを
直接的見ることが出来ずに視線を泳がす
「俺名前送って帰るんで、2人先に帰ってて
いーっすよ。旦那もずっと休んでないでしょ」
ザップの言葉になにも言えずにクラウスさんと2人
帰路につくのだった。