第8章 豪運のエイブラムス
名前の頭をゆっくりと撫でると
『ありがとうレオナルド』
さっきのキスは、この眼を治してくれたんだろう
少しずつ痛みがなくなっていくのが感じられる
こんな状況でも、1番に僕の事を考えてくれる
名前が愛しくて
もっともっとと欲が出る
先程の口付けにより潤いを増した
淡く色づく唇に吸い付けられるように近づく
息づかいがわかる距離に、そっと目を閉じると
『やだ!私の服血だらけじゃない!
レオ、それよりもシャワーが浴びたいわ』
「それよりもって‥‥」
ギルベルトさんの読み通り一目散にシャワー室に向かって行く。
ギルベルトさんが名前の声を聞き室内に戻ってくると
大きな溜息を吐き
頭を抱えてしゃがみこむレオナルドの姿だけがあった。
シャワーを浴びて、僕が取ってきた着替えに身を包み
『よし!復活
ギルベルトさんお風呂の準備ありがとうございました。』
「まだ、毛先が濡れていますよ
もう少しゆっくりされて行っては?」
1時間ほど前まで、大きな穴が開いて息も絶え絶えだったのだ
ギルベルトさんが心配するのも無理はない
『クラウスさんも、ザップも病院へ付き添ってるのよね?
あの2人を休ませる為にも早めに行かないと』
私は全然大丈夫。ふわりとした笑顔を向けると
『こらレオ!早く行くわよ』
いつもの様にカツカツとピンヒールを鳴らして
先に扉を出る名前の背中を追いかけた。