第6章 型にはまった感情
私もあまり余裕がないのよと、
煽るような視線を投げかけてくる
その表情にかぶりつくように彼女の唇に
自分のそれを合わせる
幾度も角度をかえ、息苦しいのか少し隙間を開けた
名前の唇に舌を割って入れる
歯列をなぞると、甘い彼女の吐息に
ぞくぞくと頭がしびれる
初めてでもあるまいし、キスだけで
下半身がどうしようもなく熱くなる
唇を離すと名残惜しそうに2人の間に銀の糸がひく
そんな事にさえ童貞のように胸が高鳴り
名前の首筋に舌を這わす
拒まれるかと思いきや自分の首元にキスを落としてくる
名前をみて、良い気になり
彼女のシャツのボタンに手をかける
チクリと首元に強烈な痛みが走り
「いってーー」
この痛みの張本人に目を向ける
『調子に乗り過ぎ!』
『もう、ザップのザップは痛くないでしょう?』
下半身に目を向けると、首筋のいたみに
さっきまでの熱はすっかり引いてしまっている。
「次は首がいてーよ」
というと、『次から次へときりがないじゃない
いっそ痛みがわからないように、一瞬で吹き飛ばしてあげてもいいけど』
シャツの乱れを治し、何もなかったように
『それじゃは、私は先に帰るから』
また明日ねと余韻さえ残さない彼女の背中をみおくると
彼女ハイヒールの音が聞こえなくなるまで扉をみつめる
ようやく自分も帰り支度を始めたのだった。