第6章 型にはまった感情
事務所の扉をあげると
「よー!」
ザップがソファに深々と腰掛けこちらに手を挙げている
『なんでこんな時間までいるのよ』
「仕事だよ」
彼の前には、複数のファイルの始末書が入っている
『見直したわ
万年発情期馬鹿の頭の中はセックスの事しかないと思ってたから』
「うっせーよ馬鹿名前」
自分の分のコーヒーを入れザップの隣に腰掛ける
「うまくいったみたいだな」
ザップは、始末書から目をそらすことなくそう呟く
『あー、うん
上手くはいったんだけどね』
久しぶりの高揚感を思い出しと大きな溜息をつく、
『明日朝から直行の仕事あるから、
報告書だけでも出しておこうとおもって』
そういって書類に目をとおす彼女の横顔をチラリと覗く
白い透明感のある肌に長い睫毛が影を落とし
彼女のトレードマークである2つの泣き黒子が目にはいる
すっと通った小さめの鼻に
薄く色づいた厚みのある唇
さらりと落ちた髪をすっと耳にかけるしなやかな
細い指
柔らかそうな髪に手を伸ばし
サラサラサラと指を落ちていく感触を楽しむ
髪が揺れるたびに、彼女の甘い香りが情欲を掻き立てる
「本当にいいおんな‥‥」
ポツリと口から出た言葉に
『あら、ありがとう』
先ほどまで書類に向けられていた瞳がこちらを見る
ザップのストッパーは
初めからなかったのか
ここで箍が外れたのか
力任せに組み敷いた彼女は、ソファの上で俺に
見下ろされながらも凛としたような顔をしていた。