第6章 型にはまった感情
一ヶ月ほど前の話だ
居候させてもらっていた彼女の家を出て新しいアパートに
引っ越したのは
その時は家具を選ぶのを付き添ってくれたり
いつもの名前さんだったのに、
このぐりぐり僕を求めてくれる
見たこともない子供っぽい名前さんに溢れる
笑みが抑えきれない
「おい陰毛スケベ、ニヤニヤ笑ってんじゃねぇよ」
「笑ってなんかいませんよ」
慌てて口もとにチカラを入れる
それでも、久しぶりに感じる彼女の香りにまた緩んでしまうのだ
「ッケ だらしねえ顔しやがって」
「ザップ、みっともないぞ」
今までの名前は、毎晩違う男の人と忙しそうに出かけていた
名前の容姿と、割り切った性格からスティーブンのような仕事をする事もあるし
プライベートでも、彼女は何にも執着せず奔放な方だった。
『なーんかね、そんな気分じゃないの
なんだろう、娘を嫁に出した気分?
嫁に出した父親の気持ち?なんて言うの
このポッカリこころに穴が開いた感じ!』
僕の名前を呼びながら再び僕の首元に顔を埋め
スーハースーハーと大きく呼吸をする。
うん!と急に声を張り上げたと思うと
『充電完了!』
これで今週はオッケーかな
満足そうな顔でよいしょっと、と僕とザップさんの間に座り直す
『最近仕事もあんまり無かったしね〜』
「なら、今日は俺ん家に来いよ」
『俺ん家って、あのヤリ部屋に? 死んでも嫌』
考えただけで痒くなってくるわ
いつもの調子で悪態をつく名前に
なぜか嬉しそうな顔をしてザップは名前の頭に手を乗せる
『なによ』
「なら、今夜は飲みにこうぜ」
不器用なザップ優しさに自然と笑みがこぼれた
「きっしょ」
「おいコラ犬女!聞こえてんぞ
いっつもいっつも、一言余計なんだよ!」
『ありがとうザップ
でも今日は‥』
「すまないね、ザップ
今夜は名前は僕と過ごすことになってるんだ」
「スターフェイズさんそれはないっすよ!」
『仕事よ!仕事!』
「そうゆうこと」
詳しくは口に出さないが、スティーブンさんとの仕事という事は
そういう仕事なんだろう
『だから、また誘ってよザップ』
「いーのよ気にしなくて」
「なんでテメェが答えてんだよ」