第5章 艶然とした狂気
「え、なんで・・・」
誰もいないと思って開けた扉の向こうには
パジャマ姿でソファに座っていた
名前が驚いた顔でこっちを見ている
『おかえりなさいレオ』
扉の音がしなかったからビックリしちゃった。
そういうとふわりと笑った。
「どうして・・・」
『どうしてって、私の家に私がいて何がおかしいの?』
コトリと、カップを机に置きリビングのドアの前に立っている僕に
近づいてくると両手で僕の顔を包み
『レオったら、酒臭いよ!』
不良だなーと、僕の顔を子供にするソレの様にグニグニと弄ぶ
ピンヒールを脱いだ名前は僕と目線が同じくらいになって
さっきシャワーから上がったの少しだけ毛先が濡れていて
化粧を落としたいつもより少しあどけない顔が
ほんのりと赤く色づいている
いつまでも子供扱いする名前の手を引き
その華奢な身体を抱きしめると
ドクドクと鼓動が早くなる僕に反して、規則正しい胸の鼓動が
名前から伝わってくる。
動揺もしてくれないのかという虚しさに
彼女の肩に頭を預けると
『どうしたのレオナルド?』
本当にこの人はズルい、僕をレオナルドと呼ぶときは
もう、僕が何を言いたいのか分かっている時だ
嘘をつかせない時だ
「もっと、もっと知りたいんです」
絞り出す様に言葉にすると
『レオはもう沢山知ってるじゃない
何が知りたいの?』
少し低めの声が耳元で甘く響く
「ね、年齢とか」
『え?!』先程のまで余裕のあった名前の身体が
ビクッと揺れ小刻みに震えだす
『あれ、言ってなかったかしら?
え、そんな事なの?』
もーやっぱりレオって面白いわ!と笑いながら
肩に乗せた僕の頭をワシャワシャと力強く撫でる
そんな事いつでも教えてあげるのに〜と言いながら
『ザップの1つ上よ。
レオからしたら、おばさんでしょ〜』
まあ、こんな可愛いおばさんいないけどねー
と、僕の頭にこてんと頭をもたれかけてくる
『いつもと雰囲気ちがったからビックリしちゃったよ』
心底安心したという様な声に
「犯人のビルに乗り込んだ時の話しだと思ったんですか?」
昼間の事を思い出し訪ねると
またもや『え?!』と驚いた声が聞こえる
いつも余裕のある名前がこんなにも取り乱す姿を見るのは
優越感を感じる