第5章 艶然とした狂気
ベロベロになった2人をタクシーに詰め込み
スクーターを押して家までの道を歩く
事務所から近い家というのはこういう時に本当に
便利だ。
ほろ酔い気分のまま
今日は本当に2人に感謝しなければと、
さっきまでの会話に自然と頬が緩む
マンションの前に着き、上を見上げると
流石にもう寝ているのか、ぼんやりとした間接照明の色だけが
窓から見える。
ふと、昼間の出来事が頭に浮かぶが
あれはキスなどではなく、治療だったんだと
自分にすり込み
なおも気をぬくと直ぐに蘇る唇の柔らかさと、舌の熱さ
ぐっと自分の身体が熱を持つのがわかった。
「アレは、麻薬みてーな中毒性があんだよ」
たまんねーだろ?と下衆い顔をして笑うザップの言葉を無視し
チェインが真剣な声色で手に持ったグラスに目を落としながら話し出す。
「みんなそんな気持ちになるから、副作用だって思っとかないと
私も初めては、自分がbisexualなんじゃないかって悩んだわ」
「それで、名前に迫って縛り上げられてたもんな」
本当に忘れてほしいわと、ショットを煽るチェインさんの
姿を思い出す。
一呼吸大きめの深呼吸をして音を立てない様に玄関の扉を開ける
微かに香る名前の部屋に染み込んだ甘い香りに、
最近は帰ってきた安心感さえ覚える
そんな気持ちに、早く家を見つけないとという焦りと
こんなに近くに毎日いるのに年齢さえ知らないという事実に悲しくもなる。
無性にもう寝ているであろう彼女の顔が見たくなるが
先程の店での会話を繰り返し、頭を冷やそうと水を飲むために
リビングへの扉を開ける