第5章 艶然とした狂気
ぎゅっと目を瞑ると
ふわっといつもの甘い名前の香りが鼻につき
ぷっくりとした感触に目を見開く
目の前にはブラウンの瞳に自分の神々の義眼が写り込んでいる
唇が合わさっていると認識した時には
ぬるりと唇の間から熱いものが口内に進入し
そのとろける様な感触に思考が奪われそうになる
熱い舌の上から流し込まれるものの鉄臭さに思わず
喉を動かすと喉の奥から熱い液体が食道を通っていく感触がする
『腕』
名前に声をかけられ、自身の腕に目をやる
「あ!」
そこにはもう、どこに傷があったのかさえ分からなくなっている
『小さな傷だったからすぐ治っちゃったけど
自然治癒力を高めるだけのものだから
血が足りないとか
死んでしまっているだとかだと
きかないんだけどね』
「わざわざここで見せなくても
私たちの気持ちにもなってよね」
チェインの呆れた様な顔に
名前は訳がわからないと言う顔をして首を傾げている
『あら、皆してることじゃ無い
恥ずかしがってたらいざとゆう時治せないわよ?
お尻に注射されたと思って』
あらかじめ身体に教えておいた方がいいのよと
ケラケラと笑う名前に
もうなんでもいい様な気がしてくる
『だから私もすぐ傷治っちゃうんだ』
と、ドヤ顔で僕の方に親指を立ててくる
「そ、そうなんですか」
「それよりよー
名前ちょっとレオに優し過ぎねえ!?」
いつものザップの不貞腐れに珍しくチェインが乗っかる
「最近付き合いも悪いし、なに露出狂のロリコンなの?!」
珍しく犬猿が、名前に牙を剥く
『えーだって可愛くて可愛くて仕方ないんだもん』
隣からガバッと僕の頭を抱き込むと
可愛い〜と、言いながらグシャグシャに撫で回してくる
「ちょ、、やめてくださいよ」
『だって弟みたいなんだもの♡』
その言葉に心がチクリと痛む
「そういえば名前君の弟はちょうどレオナルド君位だったな」
『そうなの!』
似てるんだーと僕を抱き込むチカラが強くなる
「苦しいですよ!」と僕がゆえば
ごめんごめんと謝りながらぱっと離してくれる
「それじゃあ少年今晩は僕が名前を借りてもいいかな?」
ソファに座る名前に後ろから手を回し
名前の肩越しから顔を覗かせる