第8章 再会、そして
「キルアとも再会できたし私は区切りがついた。これからは本格的なハンターとして雇い主を探す」
そう言うクラピカを不自然に引き留めることもできず、ルカはただ焦りを募らせる。
(どうしよう…)
ぐるぐると考えあぐねているうちに、一行は空港のロビーに到着してしまった。
「では、9月1日ヨークシンシティで!」
国立医大を受験するというレオリオと共に、クラピカは手をあげ、別れを告げる。
その場に残ったのはルカとゴン、キルアの3人。
ルカが再び顔を上げた時、すでにクラピカの影は遠く、人混みに紛れる程小さくなっていた。
(どうしよう、どうしよう…!)
「~~っ、ごめん!ちょっと待ってて」
「「えっ」」
ゴンとキルアが反応した時、既にルカは背中を見せて駆け出していた。
「待って、クラピカ!」
出発ゲートに向かっていたクラピカは、己を呼ぶ声に足を止める。
「ルカ」
「なんだ?忘れモンかよ」
レオリオの問いに答える形で、ルカはクラピカと向き合う。
「うん。クラピカに言い忘れたことがあって」
少女は長い睫毛で飾られた真摯な瞳を向ける。
向けられたクラピカは軽い既視感を覚える。
いつかの夜の飛行船、薄暗がりで魅せられたのは、この瞳ではなかったか-…
「クモを見つけたら、どうするつもり?
戦うの?捕まえるの?それとも…殺すの?」
「ルカ、お前」
唐突かつデリケートな質問に、険しい顔で何か言いかけたレオリオを、クラピカが片手で制す。
そして、ひとつ息を吐き、厳かに言葉を紡いだ。
「正直なところ、分からない。
ヤツらが答えるとは思えないが…何故あんなことをしたのか、と詰問してしまうかも知れない。
冷静に、問答無用で捕まえるかも知れない。
仇を目の前にして激昂し、殺してしまうかも知れない」
ゆっくりと、噛んで含むように、
だが、自分の中にある思いを正直に伝える。
ひた、と己へ向けられたどこか思い詰めた瞳に応えるには、それしかないと思えた。
見つめあうルカとクラピカ。
2人の顔を見比べるレオリオが我慢できずに口を出す前、
沈黙を破ったのはルカだった。