第8章 再会、そして
「…ルカ」
「大丈夫。すぐ戻るから」
心配するゴンに笑顔を見せながら、ルカは席を立った。
(「嫌だ、電話なんか出ない」なんて訳にはいかないみたいだしね)
チラと目をやれば、カナリアの額には汗が浮かんでいる。
流石にゴトーが顔色を変えることはなかったが、なんなら、ゴン達よりもゾルディック家の執事の方がよほど緊張している。
(キルアへの反応とは正反対。
…どっちも『ご主人様』なのにね)
キルアの青灰色の瞳に、イルミの闇色の瞳。
ルカには、良く似た二組の猫目が思い出された。
「遅いんだけど」
受話器を耳に当てた途端、聞こえてきたのは少し高めのイルミの声。
遅いって何が、と聞き返す間もなくイルミが続ける。
「執事室まで何日かかってる。
ルカならもっと早くウチに来れるはずだろ」
「…別にいいでしょ、何日かかったって」
「どうせゴン達に付き合ったんだろ」
ルカが応えたところに、無表情な声音が被さる。
(分かってるなら聞くな!)
思わず喧嘩を買うところだったが、一旦息を吐いて気持ちを落ち着ける。
イルミの性格は分かっている。これで悪気はこれっぽっちもないのだから、怒っても仕方ない。
「で、私に何か用?」
「ああ、それ。
オレ、ルカに何かした?
ヒソカはオレがルカを怒らせたんだって言うんだけど」
・・・怒っても仕方ない。
「ゴンと一緒だよ。イルミがキルアに酷い事するから頭にきたの」
「酷い事?」
「キルアにしたくもない殺人をさせて、友達なんか必要ないって言った」
仕返しとばかりに、今度はルカが言葉尻に被せる。
「それが酷い事?
ウチ、暗殺一家なんだけど」
「酷いよ!
キルアに1回でも聞いた?
人を殺すのは好きかって!
いや、いい。
どうせ好きか嫌いかなんて、聞いた事ないんだろうから」
「うん、ないね」
「~~っ、暗殺稼業は百歩譲るとしても、友達と遊ぶくらいイイじゃない!」
「キルに友達は必要ない」
凄いところを譲ったものだが、対するイルミは何も譲る気はない。
ルカは受話器を強く握り直した。