第1章 邂逅
「人の顔を見るなり逃げ出すなんて、いくらボクでも傷付くよ♠
それとも何かな?逃げ出す理由でもあるのかな◆」
「ん~~~ッ!」
「……?ルカひとりかい?」
「んん!んんんッ!」
「ああ、ごめんごめん♥」
パッと手が離される。
ルカは自由になった呼吸で相手に文句を放った。
「ヒソカひどい!!」
「こんなところでルカに会えるとは思ってなかったからね、つい◆」
そう言ってヒソカはルカの膝裏に腕をまわし、ひょいと抱き上げた。
2人とも絶をしていたし、受験生の視界からは外れていたから良いものの……ヒソカの評判を知る者が見たら仰天するだろう場面である。
ルカはルカでヒソカの肩に両腕を置いて、平然としているのだから……驚くべき光景だ。
「それにしても、本当にひとりなんだね♠」
「……私がひとりでいたら、おかしい?」
「いや、ボクとしては大歓迎さ♥
いつもなら、キミに触れるのだって一苦労だからねぇ♣」
(……何かあったな)
聞き返してきたルカの声に、ヒソカは憮然としたものを感じた。
何かなければ、ホームでもアジトでもないこの場所に、ルカがひとりでいるなんて……正直、考えられない。
「ねえ、なんでボクから逃げたのか教えてよ◆」
「あー…と、
正確にはヒソカからじゃなくて。
ていうか、ヒソカまだ知らないんだ」
「何をだい?」
ヒソカのその表情と、ルカがひとりでいることに驚いた事実から、彼が事件発生の一報を受けていないことが知れた。
それなら逃げたりしなかったのに、とヒソカと目線を合わせながらルカは続ける。
「私、家出してきたの」