第8章 再会、そして
『 ごめんな 』
最後に見たキルアの姿が目に焼き付いている。あの時も彼は「ごめん」と言った。
憔悴しきった顔をしながら。
(謝んなくていいのに)
ルカはぎゅっと拳を握りしめた。
「キルは私を刺し、兄を刺し、家を飛び出しました。
しかし、反省し自ら戻ってきました。今は自分の意志で独房に入っています。
ですから、キルがいつ独房から出てくるかは……」
キルアの母を名乗った女性は、ここまで話すと様子が一変した。いきなり声高に叫び出したのだ。
「まぁ、お義父様ったら!
なんで邪魔するの?!
ダメよ!まだ繋いでおかなくちゃ!!」
脈絡のない言葉にルカ達4人は眉をひそめる。
(何?キルアのお母さんて電波系?)
「まったくもう、なんてコト!
…私、急用ができました。
ではこれで、また遊びにいらしてね」
くるり、とルカ達に背を向け、すぐにでもこの場を離れたいと言わんばかり。
その背に向かって、ゴンが慌てて声を掛けた。
「待って下さい!
オレ達あと10日位この街にいます。キルア君にそう伝えて下さい」
…キュイン!
独特な機械音と共に、首だけ振り返ったキルアのお母さんは
「わかりました、言っておきましょう。
それでは……」
それだけ言うと、カルトと2人、茂みの中に消えていった。
ルカはその気配が離れていくのを確認しつつ、心中で大きく息を吐いた。
(ふーっ…
コトを構えずに済んでよかった
4人もかばいながらじゃあ、ヤバかったもん)
「私1人ならまだしも」
「? ルカ、何か言ったか?」
「ううん、なんでもない!
あ、このコ気付いたみたいだよ」
耳の良いクラピカを誤魔化しながら、ルカは後頭部を押さえて起き上がろうとする少女に手を貸す。
「ごめんね、いきなり水面蹴りなんかして。
たんこぶ出来ちゃった?」
「い、いいえ
助かったわ、ありがとう」
カナリア、と名乗った少女は自分より幾分幼いであろう、ルカの顔を珍しいもののように見つめた。
(…この娘、信じられない。
奥様の弾丸より速く動いたって言うの?)
その視線に気付いたルカは、ニッコリと笑顔を返した。