第7章 試しの門
口八丁でコロッと人を騙す、クロロみたいな才能があったらーー・・・
今ほど強く思ったことはない。
(何回見ても
アレだけは真似できないんだよね)
「なんで教えてくれないの?!
ねぇ、ルカってば!」
「なんでも!」
2人の大声に反応して、夜行性の小動物が逃げていく。
ルカが前を、その後ろをゴンが追い、森の中を進んでいる。泊まらせてもらっている家も見えてきたところだ。
「ルカってば!ずるいよ」
「しょーがないの!」
「教えてよ!」
バンッ!!
玄関の直前で追い付いたゴンが、ルカの前に回って通せんぼうをする。
ゴンが扉を背にしてしまい、これでは中に入れない。
「さっきも言ったけどね。
イルミと私の技は全然違うけど、根っこは同じ。でも『根っこ』のところは私には教えられないの」
「ウソだ!教えてよ!」
ずっとこのやり取りの繰り返し。
「ルカ、面倒くさいから教えてくれないだけでしょ!」
「そうだけど!」
「やっぱりそうなんだ!」
「ッ~~~!」
堪らずルカは頭に手をおいた。
(あ~っ、もう!)
「わかった!教えたげる」
「ホント?!」
「キルアに会えたらね!」
「・・・」
「そんな目で見ても駄目。
ゴンがここにいるのはキルアに会うためでしょ?今はそれに集中して、特訓して試しの門を開けなきゃ、ダーメ!」
じっ……と2人は見つめあう。
ルカとゴン以外に音を発する者のない静寂、沈黙が耳に痛い。
見ているのは冷たい望月ひとつだけ。
(私が先に折れたんだから、次はゴンに譲歩してもらうよ)
そんな意志を込めた眼差しを受け、流石のゴンも首肯せざるを得ない。
「……わかった。約束だよ?」
「うん、約束」
納得いかない顔をおさめたゴンに、心中で安堵の息を吐いた。
まさか、この約束がために
ゴンが折れた腕を20日で完治させ、試しの門をクリアしてしまうとは……
この夜のルカは予想だにしなかった。
第7章 試しの門 ー完ー