第7章 試しの門
「もしよければ
この家で特訓してみませんか?」
ゼブロの提案で、ルカ達は使用人の家に泊り、試しの門クリアに向けて特訓をすることになった。
しかし、話がまとまるまで……大変だった。
ルカが開けた門から入れば、試しの門はクリアできるのだが、ゴンがどうしても嫌だと言って聞かない。
友達に会いに来ただけなのに試されるなんて、おかしい。
だから、自分は侵入者でいい。
そう言って、クラピカやレオリオが何を言っても聞かなくて……
「ふふっ」
ルカはつい、思い出し笑いをしてしまう。
「ゴンってば頑固」
西に傾き始めた満月が夜中のいい時間を告げる、そんな深夜の森に、少女のクスクス笑いと……獰猛な唸り声が響いた。
ぐるる………
「……っルカ!」
月明かりの薄暗がりから、焦ったようにルカの名を呼んだのはゴンだ。
その声に最初に反応したのは
ルカではなく、なんと、ルカを背中に乗せたミケだった。
ぐるるるるる………!
ガラスの瞳に捉えられ、ゴンは思わず半歩程後退りする。
「……っ、ルカ
そんなトコ、乗って平気なの?」
「大丈夫だよ、ゴンも登っておいでよ」
巨大な首の横から顔を覗かせるルカに笑顔すらあるのが驚きだった。
ミケはゴンの知る動物とはまるで違う。
感情のまったく読めないミケの瞳……
こんなに冷たい、機械のような目を持つ動物を、ゴンは知らない。
「……俺はいいよ」
「そう?」
「でも、家族にしかなつかないって言ってたのに。すごいねルカ」
ミケの背に向かって話す分、
ルカと話すのに、ゴンはまるで空に話し掛けるような格好になる。
「なついてる訳じゃないよ
私が試しの門を開けたのを覚えてるから、攻撃しないだけ」
言いながら、ルカはミケの硬い毛並みを軽くすいたりする。
ぐるる……るる…
「……よく、触れるね」
たったそれだけの理由で自分を喰い殺さない、という生き物に。
ゴンはミケと、
それから、
少しだけルカが怖くなった。