第7章 試しの門
「キルア坊っちゃんの友達ですかい
嬉しいねェ、わざわざ訪ねてくれるなんて」
守衛のゼブロは心底嬉しそうな顔で自らが入れた茶をすすった。
茜に染まる空と同様、ゾルディック家の正門も今やすっかり夕陽に染められている。
すでに観光バスは街へと帰り、残ったのはルカ達4人だけである。
キルアに会いに来たのだ、と伝えるとゼブロ はことのほか喜び、4人に茶を振る舞ってくれた。
暖かい対応に、これは早々にキルアに会えるかと思いきや……
「しかし、君らを庭内に入れるわけにはいかんのです」
……存外に固い声音でゼブロが言った。
「それって、さっきの大きな動物がいるから?」
「その通り。お嬢ちゃんも見ただろう?
あれはミケといってゾルディック家の番犬でしてね」
ルカの質問に答えたゼブロは、そのままミケについて4人に語った。
曰く、ゾルディック家以外の命令は聞かない。
曰く、10年前の命令を未だに守っている。
曰く、侵入者は残らず喰い殺している。
「坊っちゃんの大事な友達をガイコツにするわけにゃいかないからね」
やはり通す訳にはいかないよ、と
いかにも人好きのする顔で締めくくったゼブロに、クラピカが鋭い質問を投げる。
「守衛さん、貴方はなぜ無事なんですか?
中に入るんでしょう」
「……う~ん、いいとこつくねェ」
核心をつく質問に、ゼブロは穏やかな笑顔でもってタネを明かした。
そう、守衛室横の鍵付きの扉は侵入者用のダミーなのだ。本当の門は天を衝くほどに大きな大きなあの門扉。
そして……
「そして、
本当の門に鍵はかかってないんでしょ?」
「!」
「何ィ?!」
クラピカとゼブロの話にルカが横槍を入れると、驚いたレオリオ達は守衛室の外へ出ていく。鍵がかかっていない、という門を確かめたいのだろう。
最後尾について行く少女に、神妙な顔をしたゼブロが声をかける。
「………良く鍵がかかっていないと分かったね、お嬢ちゃん?」
「だって、さっき押したら開いたもん」
「!!」
さも当たり前の顔で笑うルカに、長年この門を守ってきたゼブロも目をむいた。