第7章 試しの門
「!」
新着メールの差出人を見て、ルカは驚いた。
(クロロ?!)
クロロは滅多にメールを打たない。
送られてくるメールは確認するものの、返信することは稀だ。
(珍し~い)
しかし、そんならしくない返信メールの内容は………これ以上ないくらい「らしい」ものだった。
『何かあれば連絡しろ』
以上、1文のみ。
いかにも命令し慣れた人間のもの言いで、ルカは思わず口許を緩める。
(クロロっぽいなぁ……)
「ルカ、ルカ!
外!見えてきたよ」
興奮気味のゴンの声に顔を上げると、車窓にククルーマウンテンとおぼしき山影が迫っていた。
(あそこがキルアとイルミの家、か)
「あちらが悪名高いゾルディック家の棲む、ククルーマウンテンです」
軽やかな咳払いとともに、バスガイドさんが歌うように説明してくれる。
「樹海に囲まれた標高3722mの死火山
そのどこかに彼らの屋敷があるといわれていますが、誰も見た者はいません」
「ゾルディック家は10人家族
曾祖父、祖父、祖母、父、母の下に5人の兄弟がいて、全員が殺し屋です」
ガイドさんの説明にルカが感嘆の声をあげる。
「すごーい!5人も兄弟いるんだね」
「感心するのはソコかよ?!」
「えー?だってレオリオ
兄弟いっぱい楽しそうじゃない」
「確かに楽しそうだよね
俺、兄弟いないから羨ましいな~」
「ゴン!お前までだな……!」
「………いい加減にしろ、お前たち。
ほら、到着したようだからバスを降りるぞ」
仮にも暗殺一家のアジトへ行こうと言うのに、相も変わらぬ能天気さ。
クラピカは3人に下車を促しながら、己の額を押さえた。
観光バスの短いタラップを降りると、目の前に大きな壁と扉がそびえていた。
明らかに異様な雰囲気を漂わせる扉を前に、バスガイドさんがニコリ、と笑顔を作る。
「え、ここが正門です。
別名 黄泉への扉、と呼ばれております。
入ったら最後、
生きて戻れないとの理由からです」