第7章 試しの門
ーーー・・・という訳で
まだホームに帰れません。
ちょっとだけでも成長したら、帰るね。
PS:今からゾルディック家に行く予定です。
兄貴の反対を押し切って家出する弟くんに会いに行くの。喧嘩はしないから、大丈夫。
「・・・・・」
徹夜明けの頭で読むから、このメールが理解できないのだろうか?
最近はすっかり昼夜逆転してしまったな、と頭の隅で考えながら、長掛けのソファで首を鳴らすのは……泣く子も黙る幻影旅団団長、クロロ=ルシルフルその人である。
バサッ、と部屋のどこかで積みっぱなしだった書籍の崩れる音がする。
(帰って来ないのは、まぁいいとして。
………ゾルディック云々は一体何なんだ。
しかも、一番言いにくいことを追伸にしたな。ルカめ……)
クロロは既に乱れていた前髪をかきあげる。
溜息とともに簡単な返信メールを送ると、そのままソファに倒れ込んだ。
小鳥のさえずりと暖かい陽光ー・・・
そんな爽やかな朝に背を向けて、寝る体勢を整える。
目をつむると、黒髪の少女の顔が思い出された。
己と同じ漆黒の瞳は今、何を映しているだろうか。
(………一度、様子を見に行くかな)
ゾルディックの棲み家がどこだったか、
クロロは仕舞い込んだ記憶を紐解きながら眠りに落ちた。