第6章 最終試験
「で、ヒソカ
キミはこれからどうするんだ?」
「じっと待つよ◆
果実が美味しく実るまで……♥」
「………」
頬を赤らめて身を震わせる奇術師の様子に、流石のイルミもコメントを控える。
「ヒソカの変態」
講習室を出てすぐの廊下で、背後から容赦なく声をかけたのはルカだ。
「やぁ、ルカ◆
ハンター試験合格おめでとう♥」
長身のヒソカは目線を合わせるため、ルカの膝裏に片腕を通してヒョイ、と抱き上げた。
まるでハンター試験開始前をリプレイしているようだ、とデジャヴを感じたのはヒソカだ。
「……これで家出の件は落着だろう?
ホームに戻るかい?」
細められた奇術師の瞳には、探るような光が見てとれた。
その質問にルカは首を横に振る。
「戻らない」
常にはない硬い声音でキッパリと言う。
「友達に会いに行くから、戻らない」
「………」
「初めてできた友達なの」
「………」
「キルア、私に『ごめん』て言ったんだよ。
謝られることなんて何もない。
何もないって、直接言ってあげたい」
目線を外すことなく、真摯に話すルカ。
しばらくの沈黙の後、ヒソカはフッと息を吐いた。
「……キルアによろしく♣」
「……うん!」
「あと、念のため言っておくけど。
最終試験の試合、ボクは本気だった。念抜きだが手加減はしていない♠
キミの合格はホンモノだ◆」
「うん!ありがと、ヒソカ…!
……いってきます!!」
ルカは満面の笑みを浮かべる。
そして、間近にある米神にキスをひとつ残して、ヒソカの腕から飛び降りた。
廊下の向こうに消える少女の背中を見送り、しまりない顔の奇術師に話しかけるのはイルミだ。
「ねぇ、友達ってそんなに重要?」
「さあねぇ♠」
「あとさ、ルカが俺のこと無視したんだけど」
「あぁ、彼女怒るとこっちを見てもくれなくなるんだ♥」
「……俺、ルカに何かしたかな」
「…………」
イルミの余りの鈍さ加減に、今度はヒソカがコメントを控える羽目になった。