第6章 最終試験
バン!
乱暴に扉が閉まる音が響いた。
サトツがこの部屋を出てから、10分程の時間が経っていた。
(誰か出てきた?このオーラは……)
我知らずシーツを握りしめていた自分の手と、目覚める気配もないゴン。まさか、この状態のゴンを放って行くことは出来ないが……
(ドアから覗いて確かめるだけ)
意を決したルカはドアノブを握った。
そろり、と廊下に顔を出すと、そこには点々と続く血痕が認められた。
試験会場の扉から続く血痕を目でたどり、その先にあったのは………
「キルア?」
良く見知った銀髪だった。
ルカの声に反応するでもなく、そのまま遠ざかる背中に、不穏な空気を感じる。
廊下にまかれた血の臭いよりも、背中の方で騒がしい試験会場よりも、キルアの様子がおかしい。
「キルア、待って!どこに行くの?」
「っ……来るな!!」
軋む声音が、ルカの足を止めた。
バタバタ・・・!
キルアとは逆方向、試験会場から誰かが走ってくる、複数名の足音。
その気配に身体を震わせたキルアは
「ーーー」
(え?)
ルカですら聞き取れない無声音を発し、
ザッ…
「キルア!」
うつむいたまま、姿を消してしまった。
「ルカ!」
背中からかかる声はクラピカのものだった。
そのまた後ろからはレオリオが駆けつけてくる。
「キルアはどうした?!こちらに来ただろう」
「うん、今行っちゃった」
「ちぃっ!あのヤロウ……」
ガシガシと頭をかくレオリオに、難しい顔をして黙るクラピカ。
2人とも血痕が途切れた場所、キルアが姿を消した場所を見てそのまま微動だにしない。
痺れを切らしたルカが聞く。
「キルアに何があったの?」
「「・・・・・」」
「質問を変える。
キルアは、何をしたの?」
「「!!」」
クラピカもレオリオも、弾かれたように少女を見下ろす。
2組の視線を受け止めながら、ルカはキルアの最後の言葉を思う。音にもならなかったそれは、唇を読むしかなかったが
『ごめん』
そう、キルアは言ったのだ。