第1章 邂逅
「じゃあ、俺は他のルーキーにも挨拶してくるからよ!
(きししし!飲みやがった!)」
「うん。ジュースありがとう」
トンパと別れ、ルカは再びマーメンと受験生のやり取りを眺めはじめる。
受験生の中に念能力者がいるかどうか、探しておこうという算段である。
「使うべからず」とは言うものの、いざという時は分からない。
何より、周囲の能力者の有無を確認することは、ルカにとってほとんど習慣なのだ。
常に周りに能力者がいる。
能力者は彼女の家族であったり、その家族を狙う敵だったりする。
冗談でも、はったりでもなく、ルカは生まれた時からそんな環境にあった。
そして、彼女自身もまた能力者である。
その能力は「見る」こと。
対象を視界に入れることで、その能力を把握することができる。ルカの家族にはいつも重宝されている能力だ。
(……別に良いよね。
誰かを攻撃する訳じゃなし。
見るだけ、見るだけ……)
誰に聞かせるでもない言い訳を唱えつつ、
ルカは入口の観察を続けた。
……2時間後の結果は
ルカ以外の能力者はゼロ。
「もっといると思ったんだけどなぁ」
どこか残念そうなルカの呟きに応えるように、次の受験生が扉の向こうから現れた。
と、同時に
風切り音だけを残し、ルカの姿はその場から煙のように消え失せた。
その気配さえも