第6章 最終試験
「さて、コレは手当てに時間がかかるかも知れませんね」
サトツは洗い清めた傷口に処置を施してくれる。
「その足では辛いでしょう」と言って、控え室まで連れてきてくれたのは彼だった。
「先程のヒソカとの一戦、見事でした」
サトツは話しながらも治療の手は休めず、消毒薬を吹き掛ける。
シュッ…!
「………見事かな?
足が滑ってたまたま勝っただけなのに?」
消毒を終え、薬棚から目当ての薬を手にしたサトツが振り向き様、言葉を重ねた。
「貴女の足は『滑った』のではないでしょう?
あのタイミング、あの場所、すべて計算して『滑らせた』
皆、気付かなかったでしょうね。
実に見事なものです」
ルカは長身のサトツを見上げて、目で笑ってみせる。
「ヒソカの裏をかくには、自分も騙すくらいでないとダメだと思って。
上手くいったでしょ?」
薬缶の蓋を外しながら、サトツは再度ルカの足元に座る。
にこにこ上機嫌な少女の顔に、軽く肩をすくめた。
「本当に、隠し事が上手ですな」
「サトツさんこそ良く見てるねぇ」
そうー・・・
ルカは故意に足を滑らせたのだ。
わざと血と花びらで汚れた床に着地し、急ブレーキをかけた。未だ血の乾かぬその場所は……ルカの思惑通りに足を『滑らせて』くれた。
「彼、本気で悔しがったのでは?」
「あ~……悔しがるっていうか」
先刻、脱がせたブーツを返してもらった時、
なんとも形容しがたい笑顔で「またヤろうね♥」と言われたところだ。
「それは……気を付けてください。
目を付けられると厄介な相手でしょうから」
しゃべりながら、少女の足に包帯を巻き付ける。そんなサトツのつむじを見ながら、ルカは話題をかえる。
「ね、サトツさんて何ハンターなの?」
「何ハンターというか、遺跡の発掘と修復や保護が主な仕事です」
「遺跡………あ!
じゃ、ジムグラードの神殿遺跡って知ってる?」
「もちろんです。貴重な古代文明遺跡ですな。
内戦が激化した為に、現地に行ったことはありませんが」
「ジムグラードの人が遺跡発掘に詳しいハンターを探してるんだけど」
「!」
ルカの意外な言葉に、2人は会話を弾ませた。