第6章 最終試験
「お~い、ルカ
お主、控え室に行っとれ」
愚にもつかない事でレオリオ達とじゃれているルカに、ネテロが会場の出口を指した。
「え~?コレなら大丈夫だよ?
見た目ほどひどくないし」
出血の割に浅い傷だ、とルカは右手を振ってみせた。
「大丈夫」と言って後ろに下がろうとしたが
トン
と背中が何かに当たって、少女の身体がぐらりと傾いだ。
続けて追い討ちをかけるように軽く足を払われ、ルカはぺしゃりと尻餅をつく。
驚いて、背中に当たった「何か」を見上げると、こちらを見下ろすギタラクルの瞳とかち合う。
「イ………」
イルミ、と本名を呼びそうになり、ルカは慌てて口をつぐむ。
「そっちじゃないよ♠」
「!」
ギタラクルに気を取られている間に、どうしてか至近距離にヒソカがしゃがみこんでいた。
怖いもの知らずのレオリオが制止しようとするよりも早く、ヒソカの手が動く。
無造作にルカの片足を掴んで持ち上げた、と思えば
「わ!っ……ちょっと、ヒソカ?!」
すぽっ、とその小さな足先からブーツを抜き取った。
ビシャッ……
「!!」
イヤな音と共に、血の臭いが強くなる。
ヒソカがぶちまけたのは
ブーツの中に溜まった結構な量の血液だ。
「おい……!」
「ルカ!それは」
ヒソカを止めようとしたレオリオやクラピカも、思わず凝視せざるを得ない。
「そっち(右手)じゃないよ、
ひどいのはこっち♠」
パタパタと血を滴らせるショートブーツの中身、ルカの足は血だらけだった。
足の裏は全面皮がむけてしまい、べろんと肉が見えているし、親指はズタズタで白い爪が浮くほど血にまみれている。
「念は使わない」とヒソカと約束したから、普段はオーラで保護している部分も生身だった訳で……
肉体を越えるだけ、高速で動き続けた結果かコレだ。
「ほれ見たことか!大人しく控え室じゃ」
「エヘヘ……」
渋面のネテロに、ルカが気まずそうに頭をかく。
「や~、思ってはいたんだよ、ちょっと痛いかなって」
「「「ちょっとじゃないだろう!!」」」
周りの人間から総ツッコミを受けるルカであった。