第6章 最終試験
「・・・・・」
「ハァ、ハァ・・・」
至近距離に立つルカと、
その胸に残る薔薇の花。
少女の足元に散った真紅の花弁と、
己の胸元。
暫くの沈黙でそれらを視界に入れて、ヒソカが真顔のまま肩をすくめる。
「ボクの敗けだね♣『まいった』よ」
「!」
「おい!やったなルカ!」
「おめでとう、ルカ」
いの一番に声をかけたレオリオが、ルカの頭に手を置いて、乱れた黒髪を更にぐしゃぐしゃと掻き回した。
やめてよ、と嬉しそうな顔で嫌がるルカに、クラピカが笑う。
「お前、どんな無計画だよアレ」
両手をポケットに突っ込んだままのキルアが3人の輪に混じる。その表情は呆れ顔のお手本のようだった。
「最後スピード上げた時、
ヒソカ、絶対気付いてたぜ?他のヤツも気付いてたけどサ」
「確かに。私にも、構えていたヒソカが一瞬面食らったように見えたが……」
クラピカの同意を得たところで、キルアが親指を向けて肩越しに後ろを示す。
「そう。ヤツが『アソコ』にいたのがラッキーだった訳」
示した方を見れば、床に薔薇の花びらと血痕があり、ルカのものと思われる足跡がその周囲を赤黒く汚していた。
「そう、か…!
あの時、ルカが血と花に足を取られたのか。それでヒソカが目測を誤った……」
『ズッ』と、あの一瞬
ルカが不意に身体を沈めたのを思い出す。
狙ってヒソカの攻撃を避けたようには見えなかった。
「そ!
こいつ、たまたまラッキーで勝ったんだぜ?」
「いいじゃん!勝ったんだから」
キルアに肘の先で小突かれ、言い返えしたルカに、クラピカはゆるゆると首をふりながら笑いかけた。
「あの状況まで持ち込むのも、一瞬の隙を逃さなかったのもルカだからこそだろう」
「ああ。俺からしたら、あのヒソカを相手にしたっつーだけで勲章モノだぜ!」
大きく頷きながら聞いていたレオリオも、少女の健闘を讃えた。
「ほら!
クラピカとレオリオは意地悪な誰かさんとは違うんです~」
「うっせーな!」
レオリオの後ろに回ったルカがキルアに向かって舌を出して見せた。