第6章 最終試験
休むことなく続く攻防……
息をつかせぬルカとヒソカの戦闘に、観る者の緊張感が高まってきた。
キルアだけでなく、クラピカやハンゾー、ギタラクルや試験官達……分かる者には分かるのだ。
(ルカの限界が近い)
「いけ~~っ!ルカ!!
そこだ、やってやれ~っ!!」
レオリオの声援と、打撃音だけが響いている。
(さ、すがに…辛い……!
でも、まだ、あと1つ2つは……速くできる、からっ)
苦しい息の下、ルカは案を講じる。
(いきなり段階を飛ばして、スピードを上げる!長引かせられない、なら、
先に仕掛けて……っ、ヒソカの裏をかく、しかない!)
パンッ!
繰り出した拳をヒソカに弾かれた、その勢いのままにルカは一旦、距離を取る。
そして、一気に脚に力を込めた。
(スピードを上げる!『ココ』で……!)
ドン!!
「ダメだ、ルカ!」
叫んだのはクラピカだ。
速さを上げてヒソカを撹乱する、クラピカも考えたその方法だが
(当のヒソカが気付いてる……!)
凶悪なピエロの笑みでヒソカがルカを向かえる。ゴキリ、と指を鳴らし、長い両腕を構えた。
(……捕まえた♥)
ビュッ
スピードを上げたルカを上回る速さで、ヒソカは少女の後ろを取った。
ヒソカも、観ている者も、誰もが「終わった」と思った瞬間ー・・!
ズッ
届くと思われたヒソカの腕が、空を切る。
ルカの身体が、頭ひとつ分だけ沈み込んだのだ…!
「!」
目測を誤った奇術師が再び焦点を合わせるよりも、一瞬先にルカが動く。
ドッ!
少女の体当りで、ヒソカの長身がわずかにぐらついた。
「っ…は、つ、捕まえ…たっ」
一体、何が起きたのか
図りかねる周囲が静まりかえる中、ルカが口を開いた。
そして、肩で息をする身体をゆっくりとヒソカから引き剥がすと、右手を皆に見えるよう掲げた。
「まさか…」
ルカが幼さの残る五指をほどくと、その掌から真紅の花弁が、ハラハラと落下した。
観者達がヒソカの左胸に目を転じれば……あるハズの薔薇がキレイになくなっていた。
「「!」」