第5章 四次試験と面談
浜辺から一歩進むと・・・
ゼビル島の中心部は存外に深い森が広がっている。
足元は背の高い草に覆われ、頭上は鬱蒼とした木々が我先にと枝を伸ばす。
昼なお暗い森、草深い道行きは1次試験のメヌーレ湿原と似ているが、湿度がまるで違う。ここでは霧に悩まされることはなさそうだ。
ザザッ・・・
その森をルカはひとり進む。
進みながら、ハンター試験の今までを思い返していた。約400名から26名まで絞られた受験生。
彼らの言動、身のこなし、力量、そして能力・・・
「見る」ことが得意なルカはそれらの情報を思い出せる限り思い出し、頭の中で整理し直す。
ふと、耳に馴染んだ声を聞いた気がした。
「ルカ、己の能力や素性を他人に知られるな。…………死にたくなければな」
(うん、わかってる)
「ルカ」
(大丈夫、忘れてないよクロロ)
クロロや団員達に、事ある毎に言われ続けている、ほとんど唯一の訓戒である。
………わかってる。
私みたいな能力者がどこにいるとも知れない。戦闘相手はもちろん、後ろを尾けている審査委員会の人間にも隠しておきたい・・・よね?
「よっ、と」
ザザッ・・・
スタート地点の浜辺から十分に距離を稼いだところで、ルカはスルスルと1本の巨木に登る。
額に手をかざし、進んできた方向を遠望すれば………1人、また1人とスタートする受験生の様子が目に映る。
ターゲットの目星は付いていた。
(彼……念が使える訳でも、特別手練れな訳でもないから。ごめんだけど、プレートはすぐゲットできちゃうかな)
それに…
(能力(チカラ)は使わないで済みそう)
ルカはひっそりと己の幸運を喜んだ。
「さて、と。198番はまだかな?」
アモリ三兄弟の末っ子
198番イモリがルカのターゲットだった。