第4章 三次試験
イルミの勘違いを正すのに結構な時間を要したが、それでも他の受験生がゴールしてくる様子はなかった。
これはしばらく3人で過ごすことになると踏み、ルカはすっかり気を緩める。
(もうゴールしたし……
ヒソカとイルミしかいないしね)
「ねぇルカ、あのナイフ見せてよ」
「ん、いいよ」
半日一緒にいたルカとイルミはすっかり意気投合している。
「このナイフね、私専用なの!
ちょっと手入れが面倒なんだけど、ここを押すと……」
「へぇ、毒?」
ヒソカは楽しそうに話す2人を睥睨していた。
ほぼ無表情のイルミだが、僅かながら付き合いのあるヒソカには「上機嫌」だとわかる。
殺し屋稼業とゾルディックという特異な環境のせいか、イルミはどうしようもない程の実力至上主義者だ。ちょっとやそっとの人間には見向きもしない。
(そのイルミにここまで気に入られるとはね……◆試験中、何があったんだか♠)
会話に夢中になるあまり、ルカの手は両足を投げ出して座るイルミの太股に置かれている。このまま放っておくと、脚の上に乗り出しかねない……
ジリッとどこかが引っ掛かれるような気分を自覚して、箱入り娘にしておきたくなる旅団員の気持ちがヒソカにも良くわかった。
特に可愛がっている女性陣やシャルナークがこの光景を目にしたら、口より先に手が動くんじゃないだろうか。
(あぁ…ルカお気に入りのナイフ。
あのマニアックな暗器を与えたのは……確かフェイタンだったかな…♣)
「それで、イルミがルカを抱き上げてたのは……何故だい?」
ルカがイルミの膝に乗り上げ、イルミの指が少女の黒髪をすくうように動いたとき、堪りかねたヒソカが2人の注意と会話を引き取った。
途端に先程のヒソカの剣幕を思い出したのだろう、2人は口々に経緯を話し出す。
「それは、最後のトラップがすごくて」
「1回ルカが躓いたんだよ」
「バラバラで逃げるより、一緒に避けた方がいいねって」
「ルカが俺を引っ張るより現実的だろ?」
「ふ~ん………♠
で、イルミは何で素顔をさらしてるんだい?」
ヒソカが言葉の端々に圧力をかけ、イルミを牽制しながら……3人だけの時間は結局丸一日続いた。