第4章 三次試験
真顔のヒソカを見るのは、いつぶりだろう。
(いつもニヤニヤしてるからなー・・・
こうして見ると、綺麗な顔してるのに)
珍しく怒気をにじませる奇術師は、差し出した片手の先だけでルカを呼び寄せる。「もっと近くに」という無言の要求に、ヒソカの脚の間に膝立ちの格好で収まった。
その格好のまま、両手を肩に乗せてみても無反応。
じっと覗き込んでくる、その双眸を見返せば………ヒソカは、「凝」を行ってルカを見つめていた。
(アレかな……イルミとばっかり仲良くしたから怒ってる、とか?
……っ!
……っていうか、流石にこのオーラは
つ、つらい……っ!)
真正面から無遠慮に浴びせられる、形容しがたいヒソカのオーラ。
それに耐えるようにルカが自身のオーラを纏えば、今にも触れそうなほど詰められた2人の間の空気が……悲鳴をあげた。
パリパリッ………!
静電気のような反応に、ルカの長い黒髪がふわりと踊る。
にらめっこしたまま微動だにしなかった2人だが、しばらくして、フッ……とヒソカがルカの頭を片手で撫でた。
それを合図に、唐突に、しかしあっさりとオーラを霧散させる。
「ねえ、俺もそっち行っていい?」
「いいよ♥」
緊張が解けるのを待ったように言うイルミに、ヒソカは笑顔で答える。いつも通りの笑顔で。
その語尾に普段の調子を聞き、イルミは2人の隣へと脚を進めた。
「俺がルカに『刺して』ないか確認したろ?ヒソカ」
「普通ルカにはしない心配だけどね♠
相手がキミならあり得ない話じゃない◆」
「そんなの確認したの?
イルミはそんなことしないよ!」
イルミが腰をおろした途端の会話に、ルカが噛みつくように反応する。
ルカの少し怒ったような表情を見て、ヒソカとイルミは互いの顔を見合わせる。ヒソカに至っては溜息をこぼさんばかりだ。
「どうしたらこんなに人懐こく育つの?
大丈夫?」
「まったく、どうしてだろうねぇ♣」
「…………あれ?
ルカってヒソカの隠し子じゃないの?」
「「・・・ はい? 」」
その後、2人してイルミのとんでもない誤解を解くのに・・・結構な時間を費やすことになる。