• テキストサイズ

蜘蛛の娘 [H×H長編]

第1章 邂逅


……扉の向こうには受験生=強面の猛者がうじゃうじゃいて、


「お前の名前を教えてもらおうか!」


なんて勢いで試験が始まったり、はしなかった。


薄暗い地下道には、ルカを含め数人の人間がいるにすぎない。
彼らは「強面の猛者」ではあったけれど、
一度はこの闖入者に結んだ視線もすぐほどいてしまった。


意気込んでやってきたにも関わらず、
周囲の薄いリアクションに不安をおぼえる。


ここは本当にハンター試験会場なのだろうか?応募者が何百万人もいるはずの?


……しかも、向こうから豆のぬいぐるみ?が近付いて来るし?



(可愛いな、
ぽてぽて音がしそうな歩き方してるな)

なんてことを考えていると、
ルカの前でぬいぐるみが止まる。

瞬間、ぬいぐるみより先にルカが口火を切った。


「私はルカ!
ハンター試験を受けに来たんだけど、
ここが会場で間違いないよね?」

「間違いありませんよ。こちらが番号札です」


ぬいぐるみ、もといマーメンは「4」と記された番号札をルカに渡してくれた。




すぐにその場を離れようとしたマーメンだったが、内緒話のように小声で発された少女の言葉に阻まれた。


「念能力、本当に使っちゃいけないの?
死にそうになってもダメ?」

「! あなた、能力者ですか!?」

「うん」


ぬいぐるみは少女の返答に目を剥いて驚いた。


念能力者のハンター試験参加はままあることである。
しかし、彼らの自儘を許すことは出来ない。為に、能力者には「本試験において、念能力は使うべからず」と釘をさすメッセージが伝えられる。

今、ルカがマーメンの頭上に認めているメッセージがそれである。

能力者だけに伝わるよう、ハンター審査委員会会長・ネテロが自身のオーラを用いてしたためたものだ。

毎年このメッセージを受け取る受験生は数人いるのだが、皆、ネテロのオーラを感じて「凝」をする。そして一様に顔をしかめ、了解の意を表すことになるのだ。


しかし、マーメンにはルカが凝をしたようには見えなかった……


/ 144ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp