第1章 邂逅
律儀にも、弱火で焼かれたステーキが準備してある部屋。
少女はその光景に満足した様子で椅子に腰掛けた。
深く座ると足が床から離れてしまう、
普段なら気分急降下の椅子も気にならない。
定食屋のおじさんを、オーラを見せて驚かせてみた。そんなことも上機嫌の要因になっているようだ。
(シャルのPC使ってハッキングした甲斐があるな~♪順調順調~♪)
どこかの旅団員が耳にすれば卒倒ものの鼻歌を紡ぎつつ、袈裟懸けにさげた鞄の中から、携帯電話を取り出した。
「うわ~……
不在着信256件、受信メール557件
……馬鹿じゃないの?」
携帯の画面に向けて、呆れ声がもれる。
と同時に、差出人も本文もろくに見もせずデータを削除する、という容赦のない操作を未だ幼さの残る指が器用にこなしていく。
「♪~♪♪」
続く操作で、少女は新しいメールを作成していく。
その内容はごくごく短く、簡単なものだった。
『ハンター試験に行ってきます。
合格したら帰るから、大丈夫』
「……よし、送信っと!」
その言葉とともにメール送信されたのが早いか、地下100階の目的地に到着したのが早いか。
エレベーターの到着音が知らせたのは
11歳になったばかりの少女、
ルカがハンター試験会場に着いた瞬間である。