第4章 三次試験
(協力する2人の道…ね)
「2人目が来なきゃ進めないから…待っててくれたんだ。私はルカ。ゴールまでよろしくね!」
事態を呑み込んだルカは、人懐こい笑顔を向けた。
301番は一次試験からずっと注目していた受験生である。
ヒソカとこの301番、そしてルカ。受験生の中で念能力者は3人だけだったから。
できるだけ能力者との接触は避けたかったが、しかし、こうなったら仕方がない。
ゴールまでの長い道のりを共にする相棒に、笑顔で挨拶をしたのだが……
「カタカタカタ」
「……」
301番はカタカタ言うばかり。
明後日の方向に視線を投げたまま、焦点を合わせようともしなければ、返事をしようともしない。
「……えーと」
いやいや、彼には彼の事情があるのかも知れないよね?私の挨拶とか、呼びかけに応えられない、深~い事情が。
そうこうしているうちに、彼はスッと立ち上がる。そして、自分の中での葛藤をおさめるのに一生懸命な少女を放って、次の間へと歩いて行ってしまう。
コンパスの違いから、本当に置いて行かれそうになるのだが、301番は知らぬ顔。
ルカはめげずにコミュニケーションを試みる。
「ねぇ、名前くらい教えてくれてもいいでしょ?」
「カタカタカタ」
「呼び名がわからないと困ると思うんだけど?」
「カタカタカタ」
「私は名乗ったのに?」
「カタカタカタ」
薄暗い迷路のような道を2人は進んでいる。
ルカは301番の足さばきを邪魔しないようにしながら、じゃれつく仔犬の体で不毛な会話をつづけた。
だが、名前を聞いても、年齢を聞いても、好きな食べ物を聞いても。何を聞いても「カタカタカタ」としか応えない相手に、流石のルカもお手上げ状態。
(う~ん、手強い。悔しいなぁ…)
怒鳴り散らしても「カタカタカタ」で一蹴されるのは間違いない。どうしたものかと思案の結果、静かに爆弾を投げつけることにした。
「えっと、これが最後の質問ね。
……操作系能力者ってしゃべらないの?」
にっこり!と極上の笑顔付きで。