第3章 二次試験と飛行船
ゴォン……ゴォン……
遥か彼方に地表を望みながら、受験生を運ぶ巨大な飛行船が夜空を進む。
断続的に響くエンジン音以外には騒音も揺れも少なく、皆、次の会場到着まで貴重な休息の時を過ごしている。
実は、乗船しているのは受験生だけではない。
「ついでじゃ、乗っとけ」
というネテロの一声により、一次試験と二次試験の試験官も乗り込んでいた。
「あたしは294番がいいと思うのよねー」
「私は断然99番ですな。彼はいい」
「ルーキーじゃないけど、やっぱ44番、かな」
奥まった区画から漏れ聞こえてくるのは、メンチ、サトツ、ブラハら試験官の声。
話題は今期の合格者についてである。
「ワシは4番かの~」
「「「!!」」」
脈絡なく、その場に現れたネテロの言葉に、試験官3人は息を飲む。
一瞬前には、誰もいなかったハズの場所、
ドアから正反対の場所に、飄々と佇むネテロの姿があった。
その登場に驚いた試験官達は、しかし……会長の言葉そのものにも驚きを感じたようだ。
「……会長は4番が合格すると?」
「サトツさん、4番てわかるんだ?
俺はちょっと思い出せないな~」
「あたしもわかんないわ。男?女?」
「99番と同年代の少女ですよ。長い黒髪の」
「あぁ、そういえばいたわね。女の子がひとり」
メンチは思い出したが、ブラハはまったく認知していなかったようで、詳しい容姿を説明されてやっとわかったところだ。
だが、ひとりサトツにだけは、ネテロが言外に指摘したことが理解出来たー……
一次試験終了後、疲れを見せずにいた強者の1人である4番。
彼女とヒソカが一触即発の対峙にあった現場を、サトツは目撃しているのである。
禍々しいオーラの出所はすぐに知れたが、その標的が4番の少女であったことに少なからず驚いた。
更に、その少女が念能力を既知のものとして、使いこなしている事実にも瞠目せざるを得なかった。
「隠し事が上手い子ですよ……」
ぽつりと呟かれたサトツの言葉を拾って、「やーねー!裏表のある女って同姓に嫌われンのよー」などと、メンチがあさっての方向にコメントを付ける。
「そーゆー問題じゃ……」というブラハのツッコミは、とうとう声にならなかった。