第2章 一次試験
「すごいねぇ~!
ホントに詐欺師みたいなのばっかり。
あ、キルア見て見て!」
彼女が示した方を見るともなく視界に入れる。
いい加減見飽きたグロテスクな補食シーンだ。
(初めて動物園に連れて来られたガキかよ?)
キルアは呆れ顔である。
「お前さぁ、ゴン達のこと心配じゃないの?
ゴンは友達の悲鳴が聞こえたから
逆走してったんだろ。たぶん(てか絶対)、
ゴンが走ってった方にはヒソカがいるぜ?」
ゴンがキルアの静止も聞かず
レオリオの元へ駆け戻ったのは、つい先刻のことである。
(そうだろうな~
ヒソカがキレて暴れてるんだろうな~)
そう考えて黙ったルカに向けて、キルアが更に言葉を投げる。
「さっき地下道の出口のところでさ、
ルカが見てたのってヒソカだろ?
……あいつがヤバイのはわかってるはずだ」
(そりゃ、クモでさえ引くほどヤバイからね)
とは言えず、曖昧に頷いて応える。
実は、ルカはゴン達の心配などしていない。
『私の友達を無下に殺してしまうヒソカじゃない』と胸を張って言えたら良いけど、
そうじゃない。
3人とも、ヒソカの好みにぴったりだもん。
簡単に殺したりなんかしない、という確信がある。
(いや、キルアもだから4人だね)
「? 何だよ」
「いや、うん!大丈夫!
ゴン達は追いついて来るよ。
え~っと、私の勘って結構当たるから!」
「勘かよ!」
ルカは皆まで言わず、笑ってごまかした。
ヒソカとの関係が明るみに出てしまうのは
……避けたい。
ここでバレてしまったら、あの奇術師は遠慮なくルカに接触してくるだろう。
「もうバレてるんだから、イイじゃない♥」とかなんとか言って。
それは困る。
ルカはあくまでも、自分一人の力で合格しなくてはならないのだ。
(ヒソカ、大人しくしといてくれないかな
無理かな……う~ん、無理だな)
試験攻略よりも、
ヒソカ対応の方が悩ましいルカであった。