第12章 天空闘技場 vsヒソカ
「…いやいや、馬鹿はどっちだい?
敵に取られた急所をせっかくリカバったのに、コレじゃあ殺してくれと言わんばかりだ♣️
セオリーは…」
「「距離を取れ」」
毒気を抜かれたヒソカの呆れ声に、ルカが台詞を重ねる。
わかっているなら、と続く小言を遮って
当のヒソカから教えられた言葉を続ける。
「『距離を取る間にリターン(反撃)の方法とリスクを考えろ』でしょ?
でもそれじゃ、ヒソカには効かないもん。
……それに、貴方は敵じゃない」
乱れた息を整えながら
ルカはヒソカの首に巻いた両腕を弛め、肩口に埋めていた顔を上げた。
改めて合わされた目線と、少女から発された言葉に、ヒソカは溜息混じりの苦言を吐くしかない。
「甘えたことを……♠️
ボクはキミの大好きなクモではないし、
そのクモにクラピカをけしかけようとしているのに♦️」
(あれ)
舌打ちせんばかりに苛立つ様子は、この奇術師にしては珍しい。
至近距離にある少女の顔から目を背ける様も、これまた珍しい。
(さっきは気を逸らすなって、自分で言ってたクセに)
心の中でだけ罵って、ルカは続ける。
「貴方の入団がフリかも知れない、なんて
それこそ入団当初から皆思ってたもん。
今更だよ。
それに…」
そこで言葉を切ったルカは
そっぽを向くヒソカの頭を両手で挟み、ぐいっ、と無理矢理自分の方へ引き寄せた。
そして、噛んで含めるように言って聞かせる。
「私は幻影旅団が好きなんじゃなくて、
家族が大切なだけ。
たまたま、家族に幻影旅団が多いから
勘違いしそうになるけどね」
「……たまたま多いって、
キミの家族は全員クモだろう?」
たっぷり30秒は間を置いて発されたヒソカの質問に、少女はケロッと笑顔を向ける。
「え、ヒソカはクモじゃないんでしょ?
記念すべきクモじゃない家族第1号だよ」
「・・・・・」
今度もたっぷり30秒。
瞬きも忘れて固まるヒソカの額に、
パラリ、
と鈍色の金髪が落ちてきた。