第12章 天空闘技場 vsヒソカ
(あ、珍しい顔)
何やらヒソカが固まっている間、
ルカは久しぶりにヒソカの真顔を堪能した。
(ニヤついてなければ、格好いいのにな)
……今更だけど、ヒソカは変態だ。
美味しそうな果実、とか言って
いつも言動はおかしいし、
ちょっと興奮するとすぐに血を見る。
誰彼構わず殺して回る時もあれば、
嬉々として人助けをする時もある。
殺人狂で、戦闘狂で、気まぐれで、嘘つき。
あのクモでさえ「ヒソカは(色んな意味で)ヤバい」と認識しているくらい、
間違いなく変態で、危険。
……で、変態。
(だけど)
と、ルカは今なお背中に感じる体温を想う。
落ちてきた身体を受け止めて、
咳き込む背中と膝裏に手をやって、
ごく自然にルカを抱いてくれている。
(優しいのは、皆と一緒)
「ヒソカの裏切りは想定内だ」
そう、クロロは切って捨てるけど、
やっぱり、私には捨てられそうにない。
名前を呼んで、呼ばれて。
一緒にご飯を食べたり、旅したり、
仕事をしたり、闘ったり。
皆と同じように念の使い方を教えくれたり、
皆は絶対に教えてくれない×××を教えてくれたり。
……それで二人で怒られたり。
過ごした時間の濃淡で言ってみれば、ヒソカはとっくに家族なのだ。
クモであろうと、なかろうと。
だからー……
「ヒソカの事も諦めないからね」
言いながら、ルカは目の前の頭をひと撫でして、僅かに乱れた金髪を整えてやる。
「クモか、クラピカか。家族か、仲間か。
どっちかひとつ、なんて私には選べない。
どっちも大切だもん。
だから、選ばないことにしたの。
選ばなくて良いように、なんとかする。
……貴方のことも」
「ルカ」
「貴方がなんで裏切ったのか、考えて。
自分はどうしたいのか、考えて、考えて。
私、ヒソカの事も家族だと思ったの。
クロロは暗に諦めろって言うけど、
私には諦められない。
クモも、クラピカも、ヒソカも、
なくしたくないの。
だから、なんとかする。
なんとかするからね」
ね、と首を傾げながら静かに微笑う少女に
未だフリーズ気味のヒソカは、
今度こそ目を見開いて、驚きを伝えた。