第12章 天空闘技場 vsヒソカ
「違う?」
「いや、ご明察♥️」
「!」
言うが早いか、
ヒソカの右手がルカの顎を捕らえた。
「ぐっ」
逃げる間もない。
大きな掌に顎から首までをすくうように掴まれ、少女の身体はいとも簡単に宙に浮く。
生理的に漏れたくぐもった声に、ヒソカは堪らないとばかりの笑みを作る。
「正確には裏切りではないけどね♦️
ボクはもともと入団はしていない♣️
つまり、クモではないのだから♠️」
「ぅ、ぐ…っ」
ヒソカの目線よりも高く持ち上げられたルカは、身体を捻りながらバタバタと両足を振る。
首にかかる力を分散させなければ、と凶行に及ぶ鼻先の腕を両手で思い切り掴む。
「っう、く」
ても、どうしたってヒソカの腕は弛まない。
(う、そ、外れない…!)
苦しみ、もがく少女を愉しむように、目を細めた奇術師がその顔を覗き込む。
「面白そうだからさ、
入団したフリをしたんだ♥️
まさか『団員同士のマジ切れ禁止』なんてルールがあるとは思わなかったからねぇ♣️」
「っ、ぐ」
「いい加減ヤりたいな、と思っていたところへクラピカの登場だ♦️
他にもオモチャを見付けたし……」
(っ、オモチャって)
オモチャ、と言ったところでゴンとキルアを思い浮かべたのだろう、ペロリとヒソカが唇を嘗めた瞬間ー…
バチッ!
音を立てて、ヒソカの掌が弾かれた。
「!」
その一瞬にヒソカが瞠目したのは、しかし
膨れ上がった少女のオーラにでも、
そのオーラに弾かれた自身の掌にでもなく、
自由になったルカが、己の首に両腕を回して抱きついてきたことに驚いたから、だった。
「ゴホゴホゴホッ…!ガハッ…」
落ちてきた身体を受けとめたヒソカは
波打つ薄い背中に思わず手をやる。
未だ苦しい息の下、背中に感じる温度に
ルカはぎゅう、と両腕の力を強くした。
そして、咳き込みながらも語気を強めて
ヒソカの名を呼ぶ。
「……ッ…ヒソカの、馬鹿!」