第12章 天空闘技場 vsヒソカ
「…っ」
ゾッ、と流石のルカも肌が粟立つ。
全く飾り気のない、ただの狂気。
多分、いや絶対、同じ部屋にいちゃいけないレベルで危険だと本能が訴える。
それでも、
脳裏をよぎったのはクモの顔だった。
初めてヒソカに会った時
新しい団員との顔合わせだ、と連れていかれたアジトはどこかの都市の廃教会だった。
何が琴線に触れたのかは忘れたが、今のようにヒソカから道化師の仮面が剥がれたのだ。
ぶわり、と狂ったオーラを感じたその瞬間、ルカとヒソカの間にはパクノダが割って入った。
パクの背中だ、と知覚するより前に、今より少し軽かったルカの身体はフィンクスの肩に担がれていた。
ヒソカが元いた場所には、フェイタンのナイフが何本も食い込んでいて、強過ぎる毒で地面がしゅうしゅうと音を立てた。
「危ないなァ♦️」とナイフを避けたヒソカの腕には、マチの念糸が巻き付いていて、音もなく左の肘下を切って落とした。
(もちろん、後で繋いでいたけど)
クロロの指示で、自分が落としたヒソカの腕を「渋々」繋ぐマチの顔を昨日の事のように思い出せる。
(ふふ)
「……この状態で気を逸らすのかい♣️」
「ちゃんとヒソカの事を考えてるよ」
思わず口許を弛めたルカへ、自分以外に意識を向けるなと言わんばかり、ヒソカが更にオーラをぶつけてくる。
それを自身のオーラで上手く受け流したルカは、ゆっくりと足を進める。
定めた目線はそのままに。
「ヒソカに初めて会った時の事を思い出してた」
「……」
片眉を上げたヒソカが無言で先を促す。
「大変だったよね、蜂の巣を突ついたみたいな騒ぎになってさ。
パクはヒソカの入団は認めないって怒るし、フェイタンは暇さえあれば毒盛ってくるし…」
言いながら、長身の奇術師をほぼ真下から見上げるところまで近付く。ここまでくれば、顔がよく見えるどころか体温まで感じる近さだ。
「入団の理由は、強いヤツと闘いたいから、だったよね」
「……」
触れんばかりの距離で黙って見下ろしてくるだけのヒソカへ、ルカは確信を伝える。
「クモを裏切る理由は、クモと闘いたいから」