第12章 天空闘技場 vsヒソカ
『ご覧ください、この大観衆!
まだ決戦の1時間前だと言うのに、会場はすでに超満員です!!』
試合会場のフロアに設置されたモニターから、女性アナウンサーの声が響く。
『戦績は8勝3敗ですが、敗けはいずれも欠場による不戦敗!休みがちの死神、奇術師ヒソカ!』
『対して、戦績は9勝1敗!ヒソカに敗れて以来9連勝でフロアマスターに王手!武闘家カストロ!』
『今 最もフロアマスターに近い男2人による対決まで、あと55分を切りました!』
(休みがちの死神、ね)
人、人、人で埋め尽くされたモニター前を通りすぎながら、ルカは映像を流し見する。あの奇術師にぴったりの二つ名に口元をクスリ、と緩めながら。
「ルカ」
「ん?」
隣で歩を止めたキルアに、ルカもならった。ゴンはウィングの言う通り大人しく部屋へ帰っているから、今はキルアと2人きりだ。
ゴンもヒソカの試合は観たいだろうが、今後もウィングから念の修行をつけてもらうのに、二度も約束を破る訳にはいかない。
「ゴンの事が気になる?
生で観れないのは残念だけど、とりあえず録画しておけば……」
「ちげーよ、お前の事。
お前さぁ……
最近、何か俺らに言いたい事があるだろ?」
銀髪の間から覗き込んでくる青灰色の瞳。
その光からチラリ、と殺し屋の顔が覗く。
「念は初心者だけど、元暗殺者なんだ。
そーゆーのは気配でわかる。
ま、ゴンも心配してたけどな」
(ありゃ、参ったな……バレてたか)
周囲が生み出す喧騒の中、ルカは少しだけ首をかかげ、指で頬をかく。
でも2人には言おうと思っていたし、と口を開いた。
「ちょっと、ヒソカのところへ行って来ようかなって」
「!」
キルアは一瞬だけ目を見張る。
しかし、数瞬後には口角をあげて笑みをつくった。
「黙って行くのは止めたのかよ」
「黙って行ったら怒るでしょ」
返すルカの顔にも笑み。
仕方ないな、とキルアは人差し指で少女の肩を突つきながら言う。
「行くなっつっても無駄だろうから
止めないぜ?ただし、前みたいにやり合わないこと!いいな?」
「うん、ありがと!
じゃ、試合開始までには戻るから席で待っててね」
返事するや、ルカはくるりと踵を返して駆け出した。