第12章 天空闘技場 vsヒソカ
「うん!もうバッチリ!
完全に治ったみたいだよ」
天空闘技場、200階クラスの闘士としてゴンに割り振られた部屋。
その部屋の真ん中で逆立ちをしていたゴンは、ぴょんと腕の反動だけで起き上がり、折れていたハズの右腕をぶんぶん振り回す。
「ったく、どーゆー体してんだよ」
全治4ヵ月の怪我をたった1ヵ月で完治させた人間を目の当たりにして、流石のゾルディックも驚きを隠せない。
「言ってなかったけど、ゴンってば
ハンター試験で折られた腕もキルアの家にいる間に治したんだよ?
……すっごいよね」
「まじか」
驚くキルアの隣で腕組みしていたルカが、感心を通り越し呆れ混じりにそう言えば、キルアはゴンに向けて、ビシッと指をさす。
「お前、へん!絶対、へん!!」
「キルアに云われたくないよ!」
「まーまー、どっちもどっちでしょ?」
「「ルカは黙ってて(ろ)!」」
一通りじゃれるのにも飽いた頃、3人は連れだって部屋を出た。目的地はこの天空闘技場でも1、2を争う収容人数を誇る試合会場。
今日これから行われる、ヒソカ対カストロの試合を観戦するためである。
ダフ屋からの情報通り大人気のヒソカ戦とあって、通常以上の人混みの中を進む。
「でも、いいのかな?
ウィングさんとの約束があるし」
「それは…」
「大丈夫に決まってるだろ!
ただ試合を観るだけなんだからさ」
律儀に約束を持ち出すゴンにルカが何か言う前、食い気味に発されたキルアの言葉。
その言葉に反応して、背後から僅かに感じられていたオーラがぶわり、と揺れた。
(あちゃー)
少女が己の掌で額を覆うのと同じタイミングで、3人の背後から鋭い声が飛んできた。
「ダメです!」
「「!」」
声の主は、絶をしつつルカ達の様子を窺っていたウィングだ。
ルカとは異なり、気配を感じていなかったゴンとキルアは彼の唐突な登場に思わず身構えた。
「試合観戦も念を調べる行為に相当します。
ゴン君はあと1ヵ月、治療のみに専念なさい」
いいですね?と念を押して離れて行くウィングの背中と、まだ驚きの表情が消えないゴンとキルアを見比べながら、ルカはため息をつく。
「今後のこともあるし、言うこと聞いた方が良いかもね」