第11章 天空闘技場 約束
結局、クラピカ以外の家出中の出来事を洗いざらい報告させられ……
クロロが満足する頃には、ぐったりとソファに身を沈める羽目になったルカであった。
「うぅ」
ロココ調のソファの背に顎を置き、げんなり、と唸る様子を横目に、クロロは現れた時と同様の唐突さで立ち上がる。
「家出娘の無事も確認したことだし、
そろそろ行くかな」
「え、もう行っちゃうの?」
久しぶりに会えたのに、という気持ちが少し。
連れ戻されると思ったのに、というのが半分。
残りは、クラピカのことをもっと追求されると思ったのに、だ。
それらの感情を乗せて顔を上げれば、クロロはすでに部屋の外へと続くドアに手をかけたところだ。
動きを止めたクロロは、少女が皆まで言えずにいる質問に応えてやる。
(私まだ帰らなくて、いいの?)
「いい、自由にしろ。
ただしヨークシンには来いよ?」
「わ、わかった!
いってらっしゃい、気をつけてね!」
既に部屋の外にある背中に向けて、ルカはお決まりの「いってらっしゃい」を投げる。
ドアが閉まりきる前、
クロロの片手だけが、ひらり、と揺れてそれに応えた。
「………っは、ふー」
ドアの閉まる音が響いて暫く、ルカはソファに背を預けて目を閉じた。
(クロロが来るとは思わなかった)
誰がどう見てもあからさまに家出をしたから、誰か追ってくるだろうとは思っていた。
思ってはいたが。
(でも、クロロと話せて良かったかも知れない。一人でだいぶパニックしてたから)
目を閉じたまま、大きく深呼吸をすれば
触れる距離にまだ存在するかのような、オーラの残滓を強く感じる。
(何も問題はない、か)
腹の上で両手を組み、更にソファに沈み込みながらルカはクス、と思い出し笑いをこぼす。
(クロロが言うと、本当に何も問題ないみたいに思えてくるな)
自然に緊張が弛んでいくのを感じながら、わざと大きめの独り言を発してみる。
「これはヒソカのファインプレーかも。お礼言わなきゃかな?」
辛い思い出も、暗い予感もなくなりはしないが、譲れないモノは変わらない。
クロロもクモも、クラピカ達も
絶対になくしたりしない……!
第11章 天空闘技場 約束-完-