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蜘蛛の娘 [H×H長編]

第11章 天空闘技場 約束



「問題ないって……」

「何ら特異な状況ではないだろう。
クモを狙う者など、今更だ」


なおも無感動にクロロは続ける。


「お前が何を思おうと
俺達はいつも通り対処するまでだ」

「っ…」



(それは、そうだけど……!)



ルカは表情を歪める。



目の前にある、揺るぎを知らない闇色の瞳。

クロロのそれが思い出させるのは
同胞を皆殺しにされた、と語るクラピカの悲愴な瞳と冷たい声。


クラピカがクルタ族で、クモを仇として探していると知った時から、何度も何度も、繰り返し思い出した。






逆十字の墓標と、蝋燭の燃える匂い

自分以外、誰もいない、一人きりのホーム

部屋の角から、うっそりと

闇が溶けてくる





もし、

このまま、

誰も帰って来なかったら……






(もう誰も)

(なくしたくない……!)









「ルカ」



名を呼ばれて、ハッと正面を見ると

自分と同じ漆黒の眼が、先刻と変わらぬ近さで覗きこんでいた。


「…っごめん、ちょっと……」


「……いいさ。
さっきも言ったが、その表情は好きなんだ
せいぜい俺の予想を超えてくれ」


ふ、とわずかな息で笑いながら、
ルカが自覚なく握りしめていたであろう両手の拳を開かせる。


「……さっきとは違う顔だと思うんだけど」


されるがままに両手を預け、苦笑とともに首を傾げる少女の肩からぱらり、と長い髪がひと房落ちる。

その髪をルカの耳にかけてやるクロロの仕草は、団員(クモ)でさえ二度見するだろう程に優しげなものだった。

その様があまりに穏やかで。

さしものルカも、次の言葉を予測することができなかった。






「さて、クモの心配はそこまでにして。
……お前の話をしようか?」





相手の脚の間に挟まりながら、今更あぶら汗を浮かべてもなんにもならない。


「と、とくに私の話は」

「家出の理由、ハンター試験の結果、ゾルディックとのいざこざ、天空競技場(ここ)にいる理由」

「いや、それは」

「そうだな、まずはゾルディックの話を」

「何でそこから!?」



よりにもよって一番説明し辛い話題をピックアップされ、ルカは悲鳴をあげた。


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