第11章 天空闘技場 約束
『ルカは天空闘技場にいるよ♥』
ヒソカからクロロの携帯に送られた、たった1行のメールを見せられて、ルカは改めて驚いた。
「よく、こんなの信じて来たね」
情報源がヒソカだってだけで十二分に怪しいというのに、こんなの不確定情報が過ぎる。
「ヒソカが『お前をダシにして』俺を嵌める事はないからな」
そう、クロロは断言するが……
ヒソカの裏切りを知るルカは気が気ではない。
「それに、ヒソカもハンター試験を受験すると聞いていた。お前と合流していても不思議じゃない」
「……合流なんかしてないよ」
存外に固い声で否定するルカに、クロロは違和感を覚え、ゆっくりと首を傾げる。
他の団員ならいざ知らず、ルカは彼の奇術師ととても仲が良いハズだ。それこそマチやシャルナークが心配する程に。
(何かあったな)
俯きがちな頭と背中しか見えず、ルカの表情はクロロからは分からない。しかし、目の前の小さな背中が、心なしか……固い。
ふ、と気付かれないように嘆息を漏らし、クロロは少女の腹に腕を回した。
「えっ、わっ?!」
くるりと視界が回り、一瞬にしてルカの身体はクロロと正面から向き合う格好に反転させられる。
いきなり何をするのかと、ルカが上目遣いで問う前に、クロロが先に口を開く。
「何があった?
まさかハンター試験、落ちた訳でもないだろう」
「!」
核心を突く問いを、瞬きすら許さない勢いで投げてくる。
ルカは目をそらす訳にもいかず、暫くの間そのままの格好で固まった。
(そんなに分り易いかな、私って)
ルカは僅かな間で考えを廻らせる。
(クラピカの事を話す事は出来ない。念も知らないクラピカなんか、瞬殺されちゃうもん。話せない)
綺麗な金髪と真っ直ぐなクラピカの瞳が脳裏を掠める。それに引き摺られて、ピエロの笑みを称えた白い面も浮かぶ。
(ヒソカの事も……)
ルカが考えを廻らせたのは、ほんの一瞬だった。その一瞬で、逡巡していた瞳は決意の色に変わる。
額が触れるほど間近で、ルカの表情を見ていたクロロは僅かに口角をあげ、重ねて先を促した。
「……何があった?」