第1章 邂逅
『 只今をもって、受付時間を終了致します。
これよりハンター試験を開始致します 』
試験官・サトツが試験開始を宣言すると、薄暗い地下道の空気がピーンと張り詰める。
しかしルカは目の前の会話に夢中で、そんなことには気付きもしなかった。
「マジで? ジュース飲んだだけで下剤だって分かったのかよ?
どんな舌してんだよ、お前 」
「結構わかるよ?
刺激のくる早さって言うのかな、
それが違うんだよ 」
「俺、味オンチだからな~。あ、俺キルア。
お前は? 」
「私、ルカ! よろしくね 」
……こいつら、ここがどこだか分かっているのか?
的な周囲の視線なんてお構いなしに、ルカとキルアは会話を弾ませている。
「日常的に毒を口にする生活のあるある話」などを披露しあっているものだから、周りが2人から距離をおくのも当然だ。
だが、その周りの受験生たちが一斉に移動し始めれば、流石の2人も動き出さない訳にはいかなかった。
「あの人について行けばいいみたいだね」
「だな。……ルカ、コレ乗るか?」
走りながら、キルアが小脇に抱えたスケボーを示した。
(乗せてもらったら、キルアのお陰で合格することになるのかな)
そう思わないでもなかったが、やはり乗せてもらうことにした。
「……いいもんね、キルアと知り合ったのは私の力だもんね」
「何ぶつぶつ言ってんだよ?もうちょい前行けって」
思ったよりスケボーが小さくて、相乗りはバランスを取るのも難儀である。
だが、スケボーなんて初めてだと口にしたら、キルアが口笛とともに「やるじゃん」と言ってくれた。
ちょうどその時だ。
2人に向けて怒鳴り声がぶつけられたのは。
「おいガキ共、汚ねぇぞ!
そりゃ反則じゃねーか!」