第11章 天空闘技場 約束
(私の事、心配してくれたんだよね。しかも、信じてるって言ってくれた。
……嬉しいな)
休日の家族連れやカップル、観光客、試合の合間に買い物を楽しむ闘技場の観客など、大勢の人でごった返す売り場。
こんな公衆の面前でひとりニヤニヤしているなんて、端から見れば、ちょっと怪しいかも知れない。
わかっていても、顔が弛むのを止められない。
(初めて出来た友達がゴンとキルアで良かった)
そう改めて喜びを噛み締めた時。
ふっ、と自分に向けられる気配を感じた。
「?」
敵意はないが、明らかに向けられた気配に、ルカは周囲を伺って首を巡らせる。
「あ、ごめんなさい!」
気配を追うのに気をやった為、隣のお客さんに荷物が当たってしまい、ルカは慌てて紙袋を胸にかき抱いた。
(こんな所でボーッとしてるから、誰か呆れたのかも)
ルカは少し顔を赤らめると、両手に余る荷物を抱え直す。そして、一度部屋に荷物を置いて来よう、と踵を返す。
が、その拍子に1番小さい袋がポロリと腕から零れ落ちた。
(あ!)
零れた荷物を追って手を伸ばすが、間に合わなかった。地に落ちた紙袋を拾う為、他の荷物を抱えながら、よいしょ、とルカが屈もうとすると……
スッ
……と背後から長い腕が伸び、落とした袋を拾ってくれた。
「ありがー…」
ありがとうございます、と続けるはずの声はそこで止まってしまった。声だけではない。首だけで振り返った動きも固まる。
「……!」
見開いた黒曜石の瞳には、まったく予想外の人物が写り込む。
薄く笑みを称えたその人は、ルカの瞳の中でこう言った。
「家出娘、発見」