第11章 天空闘技場 約束
「しかもお前、試合中に茶々なんか入れてみろよ?ゴン、口きいてくれなくなるぜ」
「そうかも」
「だろ?」
……昨夜のウイングの訪問、ルカは2人に知らせずひとりで対処した。今日のゴンとギドの試合、ゴンに命の危険があったら、ルカは念を使って助けるつもりだった。
自分の能力(チカラ)を理解している、というのもあるが、もうひとつ……
(ゴンとキルアを守るつもりだったけど、
そっか、そうだよね。そんなの)
「もちろん俺も手出し無用な。あんま見くびるなよ」
(2人には必要なかったか)
「わかった。
もう手ェ出そうなんて思わない。あと、次から招かざる客は知らせる。
ごめんね、キルア」
殊勝な言葉とは裏腹に、何故かルカは顔が笑顔になるのを止められないでいた。頬を赤らめ、上がる口角を無理矢理鎮めようとしては失敗し、やはり笑ってしまっている。
ひとり百面相をするルカに、キルアは片眉を跳ね上げる。
「ルカ。俺、けっこう真面目に説教してんだけど」
「ち、違う違う!私だって真面目に反省してます!」
バキバキッとキルアが指を鳴らすのを両手で制し、ルカは慌てて首を振った。
「家族以外の誰かに、こんな風に怒られたりするなんて初めてで。しかも同い年の友達に。それで、なんだか嬉しくなっちゃって」
でも、本当に反省してるからね!と念を押す顔までも嬉しそうで、キルアはすっかり毒気を抜かれた気分だ。
それでも、にやけたらいけないと思ってか、ルカは頬を両手で押さえつけ、笑うのを我慢している。
その様子にキルアの方が吹いてしまう。
「わーかった、もういいよ!
何がそんなに嬉しいんだか知らないけど、好きに笑えよ!」
キルアのお許しから、一呼吸おいて、
ルカはへにゃ、と微笑った。
どこか恥ずかしそうに、でも心から嬉しそうに、噛みしめるように微笑った。
「……っ」
(なんつー顔)
キルアは思わず息を飲む。
そんな幸せそうな顔をするなんて。
キルアはルカの笑顔から、暫く目を離すことが出来なかった。
そう遠くない将来ー……
この笑顔を思い出して、後悔する事になるなんて。
この時のキルアには予想も出来なかった。