第11章 天空闘技場 約束
「一体、何を考えているんですか‼
念を知らずに洗礼を受けた人達を見たでしょう?!君自身ああなっていても全くおかしくなかったんですよ?!」
普段穏やかなウイングがゴンに怒りの声を張った。
それもそのはず。200階に登録した翌日、ゴンは「実践は2か月我慢するように」というウイングの教えを無視し、試合を強行したのだから。
相手は舞闘独楽のギドだった。洗礼を受けて失った両足を義足に変え、自身の姿も独楽のように装った200階4勝1敗の闘士だ。
念を覚えたてのゴンは歯が立たず、全治4か月の重症を負った。
「……ルカさん、ちょっといいですか」
「う(やっぱ、そうくるか)」
ひとしきりゴンへの説教を終えた後、無表情のウイングが振り向く。そのやり取りを横目で見ていたキルアが溜め息をひとつ。
ウイングとルカ、それに一緒に行くと言ったキルアの3人は場所を移した。
「ルカさん、貴女知っていましたね?
ゴン君が今日試合をすると」
「……はい」
1階のロビーのベンチにルカとキルアを座らせたウイングがおもむろに切り出す。先程の剣幕を知るルカは正直に白状した。
「でも、ゴンは勝つ気はないって言ってたし、それに」
「自分なら、万が一の事態にもゴン君を守れると?」
「!」
言い訳を始めた少女に、ウイングが図星を突く。目を見開くルカに嘆息したのは、ウイングと、隣に座るキルアも同時だった。
「ルカさん、その考えは金輪際捨てなさい。その考え方は『壊れてもかまわない』と洗礼を行う200階の闘士達となんら変わりませんよ」
「そんな事……!」
否定するルカの言は聞かず、話はここまでとばかり、ウイングはキルアに話を振った。そして、念の修行を2か月禁止したゴンへ「心の鍛練は続けるように」と伝言を残して宿へ帰ってしまった。
ルカは先刻のウイングの言葉が納得できず、珍しくキルアに愚痴る。
「何あれ、意味分かんない」
「メガネニイサンの真意は俺にも分かんねェけど」
「けど?」
「俺からもルカへ説教タイムな」
「……ぅえ?!」