第11章 天空闘技場 約束
「だから、どうやって念をするのかって聞かれても……2人にも言ったけど、どうやって息してるのって聞かれてる気分なんだよね」
「………」
ウイングは静かに驚愕する。
同時に、ルカの言葉に嘘はないだろうとも感じる。
子供の能力者に会うのは初めてではない。ズシもそうだし、ウイングの歴代の教え子の中にも10代の者はあった。だが……
(この少女ほど、オーラを自在に操る者はいなかった)
熟練者のそれに似て、息をするように念を使う。確かに、ルカの歳で言えばそれこそ「生まれた時から」念を修得していなければ不可能だろう。
「……ウイングさんに、引き続きゴンとキルアに念を教えて欲しい。勝手なお願いだけど」
「!」
ウイングが己の考えに夢中になっていたところへ、ルカの凜とした声が飛ぶ。
「あの2人には才能がある。念を覚えたらもっとずっと強くなる。……もし私が邪魔なら」
「邪魔な訳ありません」
「!」
邪魔ならゴンとキルアだけで、と続けるはずの言葉を遮られ、ルカは目を見開く。
その様子にウイングは微笑みで返す。
「精孔を開いた者の責任として、彼等への教えは全うするつもりです。もちろん貴女へも」
「……私も、いいの?」
「私に教えられる事がどれだけあるかは疑問ですが、とりあえず、念能力の言語化という点では寄与出来るでしょう。だから、貴女も2人と一緒で問題ありませんよ」
「ありがとう、ウイングさん!」
ホッと息をはく今のルカに、ヒソカと闘りあった際の名残は全く感じられない。
(分かっていても、只の少女だと錯覚しそうになる。……不思議な子だ)
ウイングは己の腰ほどの背丈しかないルカを見下ろしつつ、改めて自問自答してしまう。
ゴン、キルア、そしてルカに念を教えるという己の選択は正しいのか、と。
「ウイングさんが責任を感じることはないよ?ゴンもキルアも因縁の相手は念の使い手だし、私もいる。遅かれ早かれ念を知ることになってた」
「……途中で降りはしませんよ」
「なら良かった」
迷いの気配を敏感に感じ取ったルカの言葉に、ウイングは退路を絶つしかなかったのだが、
早くもこの翌日、軽く後悔する事になろうとは、知る由もなかった。